福島廃炉計画 言葉より成果を見たい
東京新聞 説社 2013年6月12日 説社
東京新聞 説社 2013年6月12日 説社
今大切なのは、具体的な成果を示し、安心安全が近づいていると実感
できることだ。
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メルトダウンした核燃料を一年半早く取り出せるかもしれない-。政府と東電は、福島第一原発の廃炉計画を見直して言う。だが避難を強いられた住民、また国民は、何より、着実な成果を見たい。
できることだ。
メルトダウンした核燃料を一年半早く取り出せるかもしれない-。政府と東電は、福島第一原発の廃炉計画を見直して言う。だが避難を強いられた住民、また国民は、何より、着実な成果を見たい。
福島1、2号機では、圧力容器を突き破って固まっている、核燃料の「デブリ」の回収を始める時期が、これまでの見通しより一年半ほど前倒しされるかもしれないという。
デブリとはもともと、破片とか残骸を指すフランス語。溶融燃料は文字通りそんな状態だろう。
前倒しと言っても、実際に作業の準備が整うまでにあと7年。しかも構内の除染が進み、建屋の上部にクレーンなどが順調に取り付けられた場合のことである。
それよりも、溶け落ちた核燃料が、どこへ、どんな状態で散らばっているのか、現段階では分からない。作業はおろか、放射線が強く、人が近づけるような状態ではない。前倒しの見通しは、甘いというしかないだろう。
日本で初めて廃炉作業に取りかかった茨城県東海村の東海原発は、1998年に営業運転を終了し、2001年に燃料棒の取り出しを終えた。だが準備作業の遅れから、原子炉の解体にかかるのは、来年にずれ込んでいる。
1979年にメルトダウンを起こした米国のスリーマイル島原発では、圧力容器内の溶解だったが、すべての燃料取り出しには11年の年月を費やした。
86年に大爆発した旧ソ連のチェルノブイリ原発では、核燃料は飛散状態でもあり、取り出すことをあきらめ、コンクリートで固める「石棺」にした。しかし、その石棺も腐食が進み、それをさらに覆う棺が必要になった。
事故がなく、炉内の様子を把握できても、原発を安全に葬ることは極めて難しい。
ましてや福島の場合、複数基爆発という世界に例のない難事業、甘い見通しは禁物である。
事故から2年3カ月。技術大国のはずなのに、作業ロボットはなぜまだできないのか。地下水はなぜ止められないのかと、福島県民は気をもんでいるだろう。
時間がたてば、施設全体の劣化は進む。余震のたびに、不安を募らせている人も多いに違いない。
長期の見通しはもちろん必要である。だが今大切なのは、少しずつでも具体的な成果を示し、安心安全が近づいていると実感できることではないか。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013061202000159.html
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