安倍政権は17日の閣議で、外交・安保政策の中長期的な指針となる初の「国家安全保障戦略」を決定しました。
この「戦略」は「専守防衛」に代えて、集団的自衛権の行使をにらんだ「積極的平和主義」を「基本理念」として明記しています。
つまり、防衛大綱では、これまでの「節度ある防衛力」を「実効性の高い統合的な防衛力」に書き換えたのです。
世界の「主要プレーヤー」としてアジア太平洋地域全域、地球規模で軍事的関与を強めていくことを宣言したのです。
そして、この戦略を踏まえた新/「防衛計画の大綱」も同時に決めました。
色々な団体から「『海外で戦争をする国』をつくろうとする危険な戦略と計画」と批判する声が直ぐに上がっています。
「戦略」は、1957年に策定された「国防の基本方針」に代わるもので、戦後日本の安保戦略の大きな転換となります。
中身は、特に中国を意識した戦略となっています。確かに、中国は経済大国となり、これまで軍事費にかなりの予算を投入して、軍事力を上げています。
僕は隣国で嫌いな国です。やり方が卑劣です。「尖閣諸島を含む東シナ海での「防空識別圏」設定など、東南アジアなどでも、領有権を主張しています。 いやらしい国家です。
中国の軍事的台頭に毅然と対応することは大切ですが、、挑発に「軍備増強」で応じれば、逆に軍事的な緊張を高める「安全保障のジレンマ」に陥りかねないことだと思います。
中期防を決定し、総額24兆6700億円としています。
17日の閣議では、新たな「防衛計画の大綱」に基づく、2014年度から5年間の「中期防衛力整備計画」(中期防)も決定しました。
総額24兆6700億円。10年に民主党政権が策定した前中期防(今年1月に廃止)と比べ、1兆1800億円増の大軍拡計画となっています。装備面でも、垂直離着陸機MV22オスプレイや滞空型無人偵察機、機動戦闘車など新兵器の導入が目白押しです
日本は先の大戦の反省に基づく平和国家路線は、国際社会の「高い評価と尊敬」を勝ち得てきた戦後日本の「国のかたち」なんです。しかし、中国、北朝鮮など、隣国で実力行使の動きを見せる中で、それなりの抑止力は必要でしょう。
しかし、憲法9条の戦争放棄の「平和国家」から、ずれ始めているように感じます。
この戦略では「力による現状変更の試みとみられる対応を示している」とされていますが、ジワジワとこのような事が「当たり前」のようになっていくのが怖いと感じます。
確かに、防衛力を適切に整備する必要性はある程度は必要でしょう。
でも、先の大戦で日本は中国、韓国、東南アジア諸国に、酷い事をしたのです。
だから、今現在、重要なことは、中国、韓国、東南アジア諸国などに日本が軍事的強化の意図があることはない。そういう事を考慮すべきで、恐怖を持たせないよう、外交の努力をする必要があります。
人には、口と耳があります。だから、極力そういう外交手段を使う智恵が必要だと思います。
日本で暮らす人々を守り、アジアと世界の安定、繁栄にも寄与することこそが大事です。
そのために日本が尽くすべきは、「軍力ではなく知力」であるとおもうのですが・・・。
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東京新聞で2013年12月18日に掲載している社説から
【国家安保戦略を決定 平和国家の大道を歩め】
安倍晋三首相が主導した国家安全保障戦略は、戦後日本が歩んできた「国のかたち」を変質させかねない。「平和国家」は踏み外してはならない大道だ。
政府が初めて閣議決定した国家安全保障戦略は、今後十年程度を念頭に置いた外交・安保の基本方針を示したものだという。
防衛力の在り方を示した新「防衛計画の大綱(防衛大綱)」、二〇一四年度から五年間の「中期防衛力整備計画(中期防)」と同時に決定されたことは、戦略、防衛大綱、中期防の一体性を示す。
外交よりも「軍事」に重きが置かれていることは否定できない。
◆武器三原則堅持を
戦略は基本理念で、日本が「専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を守るとの基本方針を堅持してきた」と指摘し、「平和国家としての歩みを引き続き堅持」すると決意表明している。
先の大戦の反省に基づく平和国家路線は、国際社会の「高い評価と尊敬」を勝ち得てきた戦後日本の「国のかたち」である。引き続き堅持するのは当然だ。
同時に、この「国のかたち」を変質させかねない要素も随所にちりばめられている。その一つが武器輸出三原則の見直しである。
紛争当事国などへの武器や関連技術の輸出を禁じる三原則が果たした役割を認めつつも、「武器等の海外移転に関し、新たな安全保障環境に適合する明確な原則を定める」と、見直しを打ち出した。
高性能化、高価格化している防衛装備品は国際共同開発・生産が主流になっているというが、三原則の理念は堅持しなければならない。国際紛争を助長したり、日本の信頼が損なわれることにならないか、厳密な検討が必要だろう。
目先の利益にとらわれて日本の安全が脅かされれば本末転倒だ。
◆戦略的忍耐の必要
中国の軍事的台頭や北朝鮮の核・ミサイル開発など、東アジアの安保環境が緊迫化していることは否定できない。日本政府としてどう対応するのか、政権の力量が問われる場面ではある。
戦略は、地域の平和と安定のための責任ある建設的役割と、軍事面での透明性向上を中国に促すことを打ち出した。このことは日本のみならず、アジア・太平洋地域の平和と安定に資する。困難だろうが、外交力を駆使して中国に粘り強く働き掛けてほしい。
将来的には「東アジアにおいてより制度的な安全保障の枠組みができるよう適切に寄与」する方針も明記した。東アジアに中国を含む形で安全保障の制度的な枠組みができれば、地域の安定には望ましい。すぐには実現しなくても、戦略として掲げる意義はある。
心配なのは、偶発的な衝突が本格的な紛争に発展することだ。
戦略には「不測の事態発生の回避・防止のための枠組み構築を含めた取り組みを推進する」と書き込んだ。日中両政府はホットライン設置や艦艇、航空機間の連絡メカニズム構築にいったん合意しながら、棚上げ状態になっている。
中国が沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海に防空識別圏を設定し、緊張はさらに高まっている。早期の運用開始に向け、中国説得の労を惜しむべきではない。
中国の軍事的台頭に毅然(きぜん)と対応することは大切だが、挑発に「軍備増強」で応じれば、軍事的な緊張を高める「安全保障のジレンマ」に陥りかねない。時には耐え忍ぶ「戦略的忍耐」も必要だ。
しかし、防衛大綱では、これまでの「節度ある防衛力」を「実効性の高い統合的な防衛力」に書き換えてしまった。
ストックホルム国際平和研究所の調査によると、軍事支出である防衛費だけをみれば、日本は世界五位(一二年)である。そのうえ防衛費の増額に転じ、防衛力整備から「節度」を削れば、周辺国が疑心暗鬼になるのも当然だ。
国家安保戦略、防衛大綱、中期防を俯瞰(ふかん)すれば、自衛隊を増強して、日米の「同盟関係」を強めようとの安倍内閣の姿勢が鮮明である。その先に待ち構えるのは、集団的自衛権の行使容認と、自衛隊を国軍化する憲法改正だろう。
果たしてそれが、平和国家の姿と言えるのだろうか。
◆軍略よりも知略で
プロイセンの軍事学者、クラウゼビッツが著書「戦争論」で指摘したように、戦争が政治の延長線上にあるならば、軍事的衝突は外交の失敗にほかならない。
防衛力を適切に整備する必要性は認めるとしても、それ以上に重要なことは、周辺国に軍事的冒険の意図を持たせないよう、外交力を磨くことではないのか。
日本で暮らす人々を守り、アジアと世界の安定、繁栄にも寄与する。そのために尽くすべきは、軍略ではなく、知略である。