被災地のバス 「復興後」を見据え計画を立てるべき。
被災地を走るバスが今、大きな岐路に立っています。
被災地の路線を支える国交省の補助事業が本年度で終了するためです。
岩手県と被災市町村は延長を要望しているが、一方では「復興後」を見据えたバス路線計画づくりも求められています。
同省の「地域公共交通確保維持改善事業」は、仮設住宅と病院や商店、公共機関を結ぶ交通確保が目的なんですが、事業期間は2011~13年度となっているため、今年度で期限が切れます。
しかし、沿岸部の地盤沈下や津波襲来地域の土地利用や嵩上げなど、全く復興が進んでいないのです。 これは、被災自治体がスクラムを組んで、期間延長を要望し、また同省もそれに答えるべきです。
1市町村に年間3500万円(13年度は4500万円)を上限に補助し、バスやデマンドタクシーなどの運行に役立てています。被災した沿岸では田野畑村から陸前高田市までの被災8市町村が利用しています。
3カ年の事業としたのは、仮設住宅の入居期限が原則2年であることを根拠にしてのことだとおもわれます。しかし、岩手県が今月改訂した復興計画工程表では、災害公営住宅の全戸完成は当初見込みからさらに遅れて16年度にずれ込んでいますから、路線バスも期間を延長する必要があります。
新たな街の姿が見えるには程遠い状況で、事業継続延長を求めるのは当然なことです。生活交通の確保には「停留所まで500メートル以内」という基準を満たす必要があります。
仮設住宅団地では今年2月にようやく、それを達成したばかりなのです。
ところが、今後は仮設住宅はもちろん、新たに建てられる災害公営住宅や自力再建の住宅もにらんで公共交通の路線を設定しなければならないという難題も抱えています。
なので、安定した乗客が見込める路線の確定はまだ先の話になるのです。
復興の段階に合わせた路線確保とともに重要なのは、復興後の将来の街を見据えた公共交通の計画をつくることでしょう。
吉田樹福島大准教授(都市科学)は「土地利用と公共交通の調整はどこでも欠如している。事業者まかせにせず、自治体と住民が知恵を絞るべき課題だ」と強調しています。
その準備を今から、直ぐに始めなければならないのです。
国交省の事業が延長されたとしても、いつかは打ち切られます。
近視眼的な対応ばかりでは、恒久的な「足」の確保策は見えてこないのではないか。
吉田准教授は「地域の交通資源は限られている。復興都市計画をむしろチャンスと捉えて、効率的な運用を考えてほしい」と話しています。
沿岸部は大震災後、若い人の転出もあり、高齢化が進んでいます。恐らく、今では、被災地の高齢化率は、全国の中でも相当に高い水準になっていると思われます。
車を持たないお年寄りにとっては、通院や買い物のバスの交通手段は不可欠なのです。
大津波は、それまでの地域の共同体、コミュニティを壊しました。
復興後に生まれる街で新たなコミュニティーをつくりあげなければならないわけで、それには、気軽に外に出て交流できる足の確保がどうしても必要なんです。
昨日、 総務省は28日、住民基本台帳に基づく今年3月31日現在の人口を発表しました。
【総人口は4年連続減、1億2639万3679人】
読売新聞 8月28日22時10分配信
1994年の調査開始以来初めて、15~64歳の生産年齢人口が8000万人を割る一方、65歳以上が3000万人を突破しています。
生産年齢人口は近年、年間数十万人単位で減少していたが、今回は前年比約124万人の大幅減となっています。 これは、「団塊の世代」が65歳を超え始めたことが要因で、向こう数年間は急速な減少となります。
少子高齢化の進展で、将来の労働力不足などが懸念される現状が改めて浮き彫りになった。と伝えています。
とにかく、わが国の少子高齢化と人口減少は急速に進んでいます。
特に地方においては、「生活交通の確保」はどこでも直面する問題になってきます。
被災地で、「交通弱者」のそのモデルを築く。そういう路線バスの復興を願いたいのです。