災害と個人情報 「命を守る」を最優先に
ガイドラインから法律へ。災害時に自力避難が難しいお年寄りや体が不自由な人ら、要援護者の個人情報をめぐる扱いが大きく変わった。
今国会で遅すぎるが、「改正災害対策基本法」が成立した。
要援護者の名簿作成が市町村に義務づけられた。
東南海大地震や都市直下地震など必ず発生すると推定される。
同じ間違いを繰り返すのは、重大な官の過ちである。
一人でも多くの命を救うために、東日本大震災の反省を生かしてほしい。
内閣府や警察庁などのまとめでは、大震災の犠牲者の約6割を65歳以上の高齢者が占め、障がい者の死亡率は被災地全体の死亡率の2倍になったと報告されている。
津波からの逃げ遅れをいかになくすか。浮き彫りになった最大の課題だ。それには平常時から地域の要援護者を把握し、万一の場合に備える体制づくりが欠かせない。
従来の指針は2006年に国が示した「避難支援ガイドライン」。要援護者の情報を収集し、避難支援プランを策定しておくことが必要-とされたが強制力はない。
多くの自治体は個人情報保護の壁に直面。名簿作りに二の足を踏んだり、名簿をせっかく作成しても避難支援者への提供はもちろん、自治体の中でも情報を共有しないなどのケースが目立った。
これでは安否確認さえできない。さらに、避難所生活で特に支援が必要な高齢者、障がい者、外国人らがさらに厳しい状況に置かれてしまう。
東日本大震災でもこの懸念が現実になってしまった。これこそが、災害の教訓である。
内閣府が今年1~3月に実施した調査で「名簿を整備し更新中」と答えた自治体は3分の2。名簿作成を終えていない自治体は依然多い。
改正災対法はこの教訓と反省を基に市町村長に名簿作成を義務づけたはずだ。
本人の同意を得た上で消防や警察、民生委員、自主防災組織などに名簿を提供できる。命の危険がある場合は同意を得ずに情報を提供できることも定めた。
国は今後、自治体向けの指針を改定して対策を加速させるらしいが、迷いを晴らす明確なものにする必要がある。
政治、行政は、「住民の生命と財産を守ることが第一の役割」であると、シッカリ自覚すべきである。
しかし、最近、なにかおかしい。
しかし、最近、なにかおかしい。
逆に、被災地から言うなら、あの水俣病の時と同じように「なるべくタッチしないで、最後は諦らめさせ、忘れさせる」という手口と似て来ている。
最近の自民党の政策や政治家の発言は、「人命」に対する軽視があまりにも目立つ。大きな危惧を抱くし、怒りを覚える。
「被災地復興にしろ」、「原発問題」にしろ、『忘れたら』国家の思うツボであると思う節がある。
とにかく、国家の究極の役割は、「国民の生命と財産」を保護することである。
その自覚が彼らが本気であって欲しい。
「国民の生命と財産」を保護する。
それが失われる恐れがあり、本人の同意を得ることが困難なときは第三者に提供できる-という「個人情報保護法23条の除外規定」を再認識してほしい。
※「個人情報保護法23条の除外規定
人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。例、事故、災害の際の安否情報など。
岩手の場合、地元紙の岩手日報社が犠牲者千人余りを対象に再調査した結果、このうち2割が要援護者の避難に関わって命を落としたと推定された。
万一に備えて、どのような支援体制をつくっておくべきか。避難しやすい街はどうあればよいか。地域づくりもあらためて問われている。
大震災の教訓を次の災害に生かすために、残された課題は極めて範囲が広く実に多い。
名簿作成はまだスタート地点だと言っていい。