消費税は国内で仕入れた商品を海外に輸出する場合、税関に申告すれば仕入れ時に支払った分が還付されます。関係者によると、同社などは税関に仕入れ額を過大に申告して還付される税額を水増ししたほか、輸出した商品を国内に送り返し、不正な還付申告を繰り返していたというのです。![]()

これまで不正還付として多かったのは、国内で販売したのに輸出を装う手口でした。しかし今回は、外見では値段がわかりにくいレンズを実際に輸出して税関 の通関証明を入手し、正当な取引に見せかけていたとみられます。この手口では書類などが整い、不正が見つかりにくくなるため、国税と関税当局は新手の不正還付の手口とみ て警戒を強めているということです。
さて、実は、今回の不正に使われた、下の図のこの消費税の還付制度=輸出戻し税こそ、野田政権が消費税増税法案を強行成立させた理由の一つです。
財界が野ダメ内閣の消費税増税を歓迎する理由 輸出戻し税のおかげで消費税を増税するほど大企業は儲か
輸出戻し税とは、企業の売り上げの内、外国への輸出では消費税は取れないので、その分の仕入れ原価に掛かる消費税分が国から還付される仕組みのことです。外国人に日本の消費税を負担させるわけにはいかないという理屈で、国内の部品仕入れ段階などで発生した消費税を国が後で戻す仕組みだと言えます。消費税を「輸出品に課税しない」ことが国際的なルールなのです。輸出品に課税しないのは、海外の消費者から日本の消費税をとることはできないからです。
さて、輸出に消費税を課さない場合、輸出業者は仕入れの際に払った消費税分が「損」になってしまいます。その分を税務署が輸出業者に還付する仕組みを、 俗に「輸出戻し税」と呼んでいます。ですから、「輸出戻し税」の還付は、大企業に限らず、輸出を行うすべての業者が受けることができます。![図]()

たとえば、上の図のように、ある企業が80億円で原材料や部品などを仕入れて製品に加工し、その製品を100億円で販売した場合を想定します。消費税率が5%であ れば、その企業は仕入れの際、代金の80億円に消費税分を加えて84億円を取引先に払ったということです。一方、販売する際には、代金の100億円に消費税分を加えた105億円を受け取ります。この企業は「売り上げにかかった消費税」=5億円と「仕入れにかかった消費税」=4億円の差額、1億円を税務署に納めます。

(全国商工会連合会 税金のページより)
ところが、多くの輸出大企業は取引の実態として、中小企業や下請けに対して納品の際に「消費税分を安くしろ」などと単価を買いたたいています。その上で、「払わなかった」消費税まで、税務署から「還付」されています。
実際に、輸出大企業は血税からお金を労せずして儲けられる「輸出戻し税」制度によって多額の収入を得ており、しかも、消費税が増税されればされるほどその額が膨らむのです。
こうした還付金は約3兆円(2010年度)あり、消費税の総額(約12兆5000億円)の約3割に上ります。仮に10%に引き上げられれば還付金は単純計算で6兆円にも達するのです。
こうした輸出企業の本社を抱えた税務署は徴収する消費税よりも還付金の方が多く、「赤字」になっています。たとえば、トヨタ本社がある愛知の豊田税務署は毎年1000億円程度の赤字です。税務署はトヨタに毎月、200億円近くを振り込まなければならず、遅れると巨額の利息が付くので大変なんだそうです!
この問題を解決する最善の方法は、消費税自体を廃止することです。消費税率が上がれば上がるほど、大企業の「益税」は増え、中小下請け企業の負担は増えていくのです。輸出戻し税の実態は、中小企業から大企業への所得移転なのですから、こんな馬鹿げた税制は即刻中止すべきなのです。
野田民主党政権とマスメディアが「大企業が望む消費税増税」に突き進む姿は原子力ムラそっくりだ

財界が消費税増税に必死になり、野田首相が財務省の操り人形となって消費税増税に政治生命をかけたのは、上の図のように、消費税増税を法人税減税の財源にするためでした。しかし、さらに、この輸入還付税で労せずして輸出大企業が儲けることができる制度も、政財界が一体となって消費税増税を推し進めた理由なのです。
福祉目的だと言いながら大企業だけが儲かり、対照的に中小企業は苦しくなる一方です。消費税の滞納率は5割にも上ります。これは事業者がわざと滞納しているのではなく、経営が厳しくて納めたくても納められない中小企業、自営業者が多いのが実態です。ズルズルと税率が引き上げられれば、滞納額も大変な額になるでしょう。
福祉は充実していないのに、欧州並みに失業率が高くなり、国家は疲弊します。還付金制度だけで3兆円も無駄遣いになる制度を温存したまま増税などとんでもない話で、消費税自体を廃止するべきですが、少なくとも、増税だけは絶対阻止しなければなりません。
今回は脱税と言うことで中小の貿易会社が立件されました。しかし、本件は輸出戻し税の、ひいては消費税の多くの問題の末端の問題です。本当にこの制度を悪用しているのは輸出大企業なのです。
財政赤字を解消するには、内需拡大が根本治療です。そのためには、所得税の累進課税率を上げ、富裕税も導入にし、大企業の内部留保にも課税して、そこから得た財源を福祉に投入し、富裕層・大企業に滞留した資金が国内で回るようにして、内需の拡大を目指すべきです。格差縮小は社会政策であるばかりでなく、経済対策でもあるのです。
今回の消費税増税法案は成立しましたが、実施までにはまだ数年あります。これからの選挙で消費税増税に反対する諸党を選挙で勝たせ続け、消費税増税を阻止すべきです。そのチャンスはまだ十分あるはずです。
この経済状況で消費税増税なんてしたら日本経済は即死です。
よろしかっ
同じ商品を何度も輸出入、消費税4億円近く不正還付
【村上潤治】カメラの望遠レンズなどを輸出していた商社約10社が東京国税局の税務調査を受け、昨年までの1~3年間で4億円近くの消費税の還付を不正 に申告したと指摘されていたことがわかった。70億円超が不正還付を目的にした偽装取引と判断され、重加算税を含めて約5億円を追徴課税されたとみられ る。
指摘を受けたのは「ハナヤカ」(東京都板橋区)など都内の商社約10社。ハナヤカは2006年、ほかの多くは10~11年に設立された。一部の会社は指摘を受けて修正申告したが、税務調査後に連絡がとれなくなった会社もあるという。
消費税の場合、売り上げにかかった消費税額から仕入れ段階で負担した消費税額を差し引いて納める。輸出品は消費税を免除され、輸出会社は税務署に申告すれば、国内での仕入れ時に負担した消費税分の還付を受けられる。
関係者によると、これらの商社は、1回の取引につき日本製の中古レンズ数十から数百本を、1本あたり十数万円で成田空港から香港に輸出。レンズは都内の 別の会社が香港から100円前後で輸入したものを、新品同様の値段につり上げて仕入れるなどしていた。一部では国内の中国人留学生を介してレンズを仕入れ たとするケースもあった。その際に支払った消費税分の還付を税務署に申告し、受け取ったまま、返さない商社もあるという。
国税局は昨年、設立直後から毎月、レンズの取引で消費税還付を求める商社が相次いだため、調査した。すると、一つの会社が同じレンズを何度も繰り返し輸出していたケースが確認できたという。国内の仕入れ先には休眠会社や既に倒産した会社もあった。
国税局は、一連の輸出入や売買が、当初から消費税の不正還付を目的とする悪質な仮装・隠蔽(いんぺい)行為を伴う取引と判断。還付申告額全額を重加算税の対象にしたとみられる。
これまで不正還付として多かったのは、国内で販売したのに輸出を装う手口だった。しかし今回は、外見では値段がわかりにくいレンズを実際に輸出して税関 の通関証明を入手し、正当な取引に見せかけていたとみられる。書類などが整い、不正が見つかりにくくなるため、国税と関税当局は新手の不正還付の手口とみ て警戒を強めている。
ハナヤカの社長は取材に「税務署に還付の申請が認められなかった。税務調査を受けて会社の経営をやめた。ほかは話せない」としている。